東京で焼肉を食べるときは「肉」にばかり目がいきますが、同時に意識したいのはタレです。タレの役割は肉をおいしくさせるために存在していると思われがちですが、その他にも役割を持っています。タレの種類によって、淡泊な味の肉をおいしく食べることもできますし、脂っぽい肉をさっぱりと食べることもできます。肉の部位によって含まれる脂の量も違えば、入っているサシの具合も違う、さらに肉の厚さや食感も違うため、同じ肉でありながらさまざまな食べ方ができるのです。
このように東京の焼肉に使われているタレは、店独自のものが多く、個性が発揮された内容となっています。店によっては、スタッフがこの肉であればこのタレを使ってくださいと伝えてくることもあるため、一番おいしい食べ方を事前に知ることができるのです。もちろん、最初の1枚はスタッフからのアドバイスとおりに食べてみるのがベストだと思われますが、他のタレを使いたい、他の食べ方も試してみたいという場合はその思いを実行してみるといいでしょう。自己流の食べ方でおいしく食べられるのだとすれば、それも一つの楽しみとなるからです。
一般的に、銘柄牛を食べるときは、自己主張の強いタレを使うことはあまりありません。その理由は肉のおいしさを消してしまうからです。肉のおいしさを消してしまうと、タレの味しか伝わってこないため、銘柄牛の意味が無くなってしまいます。タレはあくまでも脇役でいることが大事であり、肉を引き立たせる存在でなければならないのです。
タレの枠に入れるかどうか迷うのが「塩」です。塩はどの料理にも使われるものであり、味を締める役割もあります。塩がよく使われるのはタンであり、「塩タン」というメニューがあるくらいです。それくらい馴染みがあり、古くから使われてきました。現在では、タン以外でもカルビやロース、ホルモンでも塩を使う店が増えており、淡泊なおいしさに注目が集まっています。塩というのは、素材のおいしさが保証されているものにしか使えません。それは、塩でおいしく食べるというのは、本来の味がおいしいものでないと成り立たないからです。
東京の焼肉でよく見かける銘柄牛は、牛そのもののおいしさが際立っています。脂の甘さはしつこくなく、口に広がるのはうまみ成分です。もし、銘柄牛でなければ、脂のおいしさもうまみではなく、しつこく感じられるかもしれません。塩がカルビやロースにも使われているというのは、銘柄牛に限ってのことだと思われます。この他にも、東京の焼肉店では、わさびが添えられている店もあります。わさびは薬味としての印象が強く、臭みを消してくれる効果があります。そのため、ローストビーフなどに添えられていることもあるくらいです。
わさびは味覚や臭覚を刺激することで食欲をアップさせる効果がありますし、実はビタミンやミネラルといった栄養も摂れるというすぐれものです。唾液の分泌を促してくれるので消化を促進し、食欲が増します。東京の焼肉を食べるのであれば、しっかり食べたい、しかし今日はそこまで食欲がないかも……というときは、肉にあえてわさびを付けて食べてみるといいでしょう。肉そのものは消化のよい食べ物ではないため、野菜もしっかり摂るようにすれば、消化を促し、無理なく一定量を食べることができるはずです。
この他にも東京の焼肉で使われているタレは、黒コショウがあります。黒コショウと相性がいいのは、ごま油です。芳醇な香りがしながらも、黒コショウのピリッとくる辛さはやみつきになってしまう一品であり、焼肉を食べるときはこの組み合わせばかりという人もいるくらいです。どちらかといえば、大人の味の印象が強いので、子どもにはあまりおいしさが伝わらないかもしれませんが、通の食べ方としてタレ選びで困ったときは試してみてください。